「考え、議論する道徳」への質的転換とは、令和2年度(小学校)、3年度(中学校)に全面実施される学習指導要領の方向性を先取りし、その実践は、「主体的・対話的で深い学び」の実現に他なりません。
「考える」というのは、主人公の心情を考えるのではなく、「主人公の心情を通して道徳的価値を理解し、それに基づき自分事として問題を考えること」ですし、「議論する」というのは話し合いをするということではなく、「多様な考え方、感じ方と出合う、交流する」ということです。
しかし、「考え、議論する」ということは、授業の質的転換を図る手立てにしかすぎません。質的転換で目指しているのは、「特別の教科 道徳」の授業で「主体的、対話的で深い学び」を実現させることと、そのための「道徳科の見方、考え方」を働かせることになります。これは「特別の教科 道徳」の目標にある「様々な事象に対して道徳的諸価値の理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深めること」であり、子ども自身が納得解を得られる授業の実現を図っていくことに他になりません。
「授業研究」では、授業の質的転換を図るためのポイントとして、次の2つのことについて研究してきました。
道徳科の学習指導過程には、特に決められたものはありません。一般的には、「導入」「展開」「終末」の各段階を設定することが行われています。ここでは、各段階における発問の在り方について、提案をします。
授業の質的転換を進めるために、文部科学省から次の3つの「質の高い多様な指導方法」が示されました。
これらは多様な指導方法の一例で独立した型ではありません。様々な指導方法の組み合せや新たな方法による指導も考えられます。ここでは、3つの「質の高い多様な指導方法」ごとに、指導案(小中学校合わせて15編)を示して、指導方法についての提案をします。