文字を書く力は、多くの学習活動を支える重要な力の一つである。しかしながら、書写の授業において学習した内容や身に付けた力が、日常の文字を書く活動に生かし切れないという課題がある。日々の学習において、ノートに書く活動で時間がかかったり、速く書けるが字が雑であったりする児童が多い。そこで、書写の学習指導を日常の文字を書く活動につなげる工夫が必要であると考えた。
書写に関する事項について小学校学習指導要領を見ると、第5学年及び第6学年において「書く速さを意識して書く」ことが示されている。この点に関して小学校学習指導要領解説国語編においては、「書く場面の状況によって速さが決まってくることを意識すること」や「速く書くことが求められるだけでなく、ゆっくりと丁寧に書くことが求められる場面もある。」としている。このことから、学習指導要領に示されている「書く速さを意識して書く」とは、「速く」あるいは「ゆっくりと」といった速度のみではなく、丁寧さについても併せて指導する必要があることが分かる。先行研究においてはこれらの学習の必要性について触れられているものの、具体的な指導に関して日常化の視点から言及しているものは見られない。
そこで、本研究では、書字場面に応じて適切に書く力を高めるため、高学年の書写指導において、文字を書く速さと丁寧さについて取り上げて指導した。具体的には、児童が文字を書く際に「速さ」「丁寧さ」を意識させるために「速さのものさし」「丁寧さのものさし」を活用した。文字を書く際の速さや丁寧さを意識させる上で、2つのものさしが有効であるかどうかについて検証し、有効性を確認することができた。