子どもたちの運動能力の低下が言われるようになって久しい。特に投力は、低下及び個人差が著しい。そのため、高学年で行われるドッジボールやベースボール型ゲーム等の授業で「ボールを持っても投げようとしない児童の姿」が、よく見られることにつながると考える。また、ゲーム領域の系統的な学びを考えたとき、中学年のネット型ゲームへ発展するような低学年での教材がないという問題点がある。その結果、高学年で行われるソフトバレーボールの授業で「棒立ちでボールを見送る児童の姿」が、よく見られることにつながると考える。
上記の2つの課題の解決を目指し、本実践では、主に次の3つの指導の手だてを講じた。
1 教具の工夫
ボールの代わりに、ビニール袋に緩衝剤を入れた物(マシュマロボールと児童が命名)を使用した。通常のボールよりも落下速度が落ち、捕球するための落下地点への移動が容易となる。また、180cmのネットを越えて、ねらった所へマシュマロボールを落とすためには、肘を高く上げた状態から振り下ろして投げる必要性が生じた。
2 簡易化した規則の提示
チーム戦であるが、コート内で1対1となる規則を提示した。相手が投げ込んだマシュマロボールを捕球し、相手コートへマシュマロボールを投げたらコート外で待つ同チームの人と交代する。これにより、全員に「投げる」「キャッチする」機会を保証した。
3 「動きのコツ」の共有化
単元を通して、「投げるコツ」を問い、思考する場面を設定した。さらに児童の見付けたコツを全員で試した。投力の技能の向上と共に、単元の途中から、「キャッチするコツは何か。」を問い、思考する場面を設定した。「投げるコツ」と同様に「キャッチするコツ」を全員で試した。
本実践の結果、投力の向上及びボールの落下点へ移動する動きの習得に、一定の成果が見られた。今後も、投力の向上とネット型ゲームへの発展を想定した新教材の開発を研究していく。