「不登校」や「問題行動」に対応していると、“「原因」は何か”と尋ねられることが多い。しかし、想定される「原因」は多岐にわたる。「発達障がい」「児童の心理」「担任や職員の対応」「保護者のしつけ」「家族関係」「保護者と学校職員の関係」・・・等々。“原因”と思われそうな要因が多く、さらにどれが最も重大な要因か決めることは難しい。また、往々にして「原因探索」は、「犯人捜し」になることが多く、事態の進展につながらないことが、私には多かった。
学校現場では、迅速な変化が求められ、対応できる時間も限られている。保護者との長期にわたる教育相談を継続する時間・機会を確保することも困難である。そう考えていた私にとって、最も現場で用いやすかったのは、「短期療法(ブリーフセラピー)」と呼ばれる支援方法であった。「原因」と「結果」を“相互に循環するもの”と見なすこの方法では、「原因」を特定することに時間やエネルギーを割かない。問題の原因は個人にあるのではなく、””問題””は、それを取り巻く“対人関係”から生まれると見なし、次のような考え方を原則とする。
1 「原因」を探さなくても、「問題」は解決できる。
2 「問題が起こらない」例外的な状況を探す事が役に立つ。
3 対象児童や保護者の「もつ力」に焦点を当てる。
4 うまくいかないことは続けない。「別のこと」をやってみる。もし、それがうまくいけば、その「別のこと」を続けてみる。
5 「解決しよう」として行っている「こと」自体が、「問題」を維持し続けていることがある。
これまでの実践をまとめ、このアプローチの有効性と実践上の課題を提案する。