学習指導要領解説特別の教科道徳編では、指導のねらいに即して「道徳的行為に関する体験的な学習等を取り入れる工夫」などの指導方法の工夫が示されている。
私はモラルスキルトレーニングと社会性と情動の学習の手法を取り入れた新しい学習指導過程を作成し、その有効性を実践で検証した。
作成した学習指導過程の主な手だては次の3点である。
1 社会性に関するスキルの提示
キャラクター化され、語呂合わせで覚えやすくなっている社会性に関するスキルを提示する。提示したスキルの視点を生かしてロールプレイを行うことで、行為の視点を焦点化することができ、児童が何を意識して活動すればよいかが、分かるようになる。
2 教師のモデリングの後、ペアでロールプレイ
ロールプレイの前に教師が行動のモデルを示す。スキルを備えていない児童も、真似をすることで、演技ができるようになる。また、即興的な演技にしないことは、児童が安心して活動を行うことにもつながる。ロールプレイでは行動する役と相手役のどちらの立場も経験する。多様な感じ方に接することができ、物事を多面的・多角的に捉えることができる。
3 感想のシェアリング
感想は行動する側の児童全員と、される側の児童全員に聞く。自分のペア以外の感想を聞くことで、様々な思いに気付き、さらに自分の行為を価値付けることができる。どのような心情の変化が起こったのかを聞くことは、自らの道徳的行為を行おうとする意欲を強くすることにつながる。
実践を検証した結果、児童はロールプレイに意欲的に取り組んでいた。また、スキルを理解し、それが行動に表れたことも、活動の分析から確認できた。感想のシェアリングでは、相手の気持ちを知り、自分の行為に価値付けをしていたことも分かった。このことから手だては有効であり、児童は授業を通して道徳的行為を行う意欲を高めようとしたと言える。