これまでのハードル走の授業において、踏み切り時と着地時に減速する児童の姿が見られた。原因として考えられるのが、ハードルを跳び越える際の体重移動がスムーズに行われていないことである。
そこで、振り上げ足の着地点を意識させ、ハードルを跳び越えてからの1歩目を大きく前に出す走り方を身に付ければ、インターバルをリズミカルに走ることができると考え、先行実践を行った。振り上げ足が着地すると同時に支持足となり、前方への体重移動が起こる。これにより、抜き足が前方に出しやすくなり、加速を生むと考えたからである。その結果、踏み切り時に減速が少なかった児童はインターバル間で加速し、タイムの短縮につながり、一定の成果を得た。しかし、着地点を意識させたことにより、踏み切り時に減速し、高く跳ぶ児童も見られた。
ハードル走の経験が少ない時期は、踏み切り時の減速を少なくするために前へ進む意識を強く持たせることが必要である。また、高学年では競争型、達成型の運動である陸上運動に楽しさを感じていない児童もいる。これらの課題を解決するために次の手だてを講じ、実践を行った。
1 8秒間ハードル走
山本貞美氏考案の「8秒間走」は、目標設定が明確なため、楽しんで取り組むことができる教材であり、個を大切にし、運動が得意、苦手に関わらず全ての児童に全力で取り組ませることができる教材といわれている。また、走る距離を伸ばしていくことが目標になるため、前への意識が強くなると考えた。そこで、「8秒間走」をハードルに応用した。
2 主観的心地よさ尺度での振り返り
ハードル走一本毎に、自分の走りを気持ちよさという観点で数値化した。児童の気持ちよさをスムーズなインターバルと規定し、気持ち悪い時の走り方と気持ちよい時の走り方を数値化することにより、自分の走り方を振り返った。気持ちよい時の走り方を振り返ることで、自分なりのコツを言語化させた。
3 グループ対抗のゲーム
練習の際の教え合いや励ましの姿を引き出し、「関わる」ことで、「できる」「わかる」姿を導くことができると考え、グループ対抗のゲームを行った。
苦手な運動でも、運動の楽しさ、喜びを感じさせることで、運動の質を高めていくことを追求した実践である。
<参考文献>
山本貞美『高田典衛の「子どものための体育」と「8秒間走」』鳴門教育大学研究紀要12巻 1997
山本貞美『「8割走」を取り入れた学習プログラムの一考察』鳴門教育大学研究紀要19巻 2004