小学校においては、学年が進むにつれて、「変化や対応の規則性」「伴って変わる2つの数量関係」という関数の考えを用いて問題解決する場面が増えていく。その考えは各学年において着実に指導を積み重ねることで身に付く考えであるが、小学校第1学年では、関数の考えを意図的に指導する場面が少ない。
一方、第2学年や第3学年では、関数の考えを用いて学習する場面があり、その学習を理解することに難しさを感じる児童が多い。そこで、第1学年「数と計算」領域において「変化や対応の規則性」「伴って変わる2つの数量関係」の指導を工夫して行うことで、学年が上がっても関数の考えを用いて問題解決することが容易になると考える。
本研究では、小学校第1学年『A 数と計算』領域「ひきざん(2)」において、以下の手立てを用いて授業を進めることで、「差が等しい減法は、減数が1つ増減すれば、被減数も1つ増減する」という依存関係に着目し、対応のルールを明らかにしようとする姿の育成を目指した。
1 規則正しく式を並べ替える活動
答えが2、3になる引き算を児童に考えさせたところ、「11-9」「10-8」「11-8」「10-7」「12-9」が出された。それらを掲示した後、「どうすれば、これらの引き算をきれいに並べ替えることができるかな。」と問うた。「きれいに並べ替える」とは、「数字の順に並べ替えれば良い」と児童は考えた。すると、減数と被減数との間の変化や対応の規則性が分かりやすくなり、「片方の数が変わると、もう一つの数も同じように変わるのではないか。」という見通しをもたせることができた。
2 並べ替えた後、11-6となる式から他の引き算の式を見付ける活動
並び替えた後、「減数や被減数に1ずつ足すと答えが同じ引き算の式ができる。」ということに気付いた。そこで「11-6」をもとになる式とした。これを基に答えが「5」になる引き算同士の関係を確認した。このことで、11-6の式から「減数や被減数から1ずつ引けば、10-5ができる。」ということに気付かせた。
12-7=(12+1)-(7+1)=13-8 11-6=(11-1)-(6-1)=10-5
のように、+□や-□がどんな数でも、引き算の答えは変わらないことを捉えさせた。「数字が規則的に並んでいる」「一方が変わると、他方も同じ数ずつ変わる」といった関数の考えが身に付いた授業であった。小学校第1学年から、「変化や対応の規則性」「伴って変わる2つの数量関係という」関数の考えを扱うことは、その後の学習に大きくプラスに働く。