教師が明確な意図をもって資料作成・提示することが、児童が調べたい、考えたいと思える学習問題づくりに有効かどうか、平成24年度に研究した。この研究により、教師が明確な意図をもって作成した資料の提示は、児童の認識のズレを生んだり、新たな問いを生んだりして、児童の問題意識を高めることに有効に働くことが分かった。しかし、教師の意図が強調されている分、限定的な読み取りや思考を生み、児童が事象について、考えを確かにするまでには至らなかった。そこで、資料提示によって児童の問題意識を高め、児童が資料を目的に応じて選択、関連付けて問題解決を図る学習を取り入れることで、資料を根拠に考える力を高めることができると考え、本研究を行った。具体的な研究内容は大きく次の2点である。
1 児童の問いを生む資料提示
日本史と児童を教師が結び付ければ、児童は歴史的事象に関心をもち、資料をもとに考えようとする意識を高めると考える。そのために、地域教材を単元の導入に取り入れ、児童の中での認識のズレ、まだ解決していないことを教師が取り上げたり、揺さぶりをかけたりして学習問題づくりを行う。
2 資料を選択、関連付けて問題解決を図る学習
問題意識が高まった児童に、以下の手立てで問題解決に取り組ませる。
①複数の資料提示
②学習形態の工夫「ア資料選択(グループ)」「イ読み取り(個人)」「ウ思考(個人)」「エ検討(グループ)」
③思考の流れを視覚化したワークシートの活用
1によって、戦争への関心が低い児童は、「戦時中の子どもの生活」という戦争の断片を捉え、自分たちの住む地域も歴史に関わっていると認識し、地域の歴史的出来事が、日本全体にどのように関係しているのか、もっと知りたいと考えるようになった。
2では、個人で問題解決を図る前に、「ア資料選択(グループ)」を行い、教師が提示した複数の資料の中から、必要な資料をグループで選択させた。資料を選択するために、グループ内で自然と資料の読み合いが行われ、多様な考えに触れながら、資料から読み取ったことを共有することができた。次に個人作業で「イ読み取り(個人)」「ウ思考(個人)」を行い、児童は自分の読み取りと、仲間の読み取りを生かしながら、資料を根拠として、または、資料から解釈したことを根拠として、自分の考えを確かにすることができた。自分の考えをまとめやすいように、思考の流れを視覚化したワークシートも、自分の考えを表すことが苦手な児童にとって、有効な支援となった。