学習指導要領解説国語編の文学的な文章の解釈に関する指導事項から、どの学年においても登場人物についての叙述に着目しながら読むことが必要であることが分かる。また、全国学力・学習状況調査の4年間の調査結果から、国語の「読むこと」における課題として、「物語に登場する人物についての描写や心情、人物相互の関係を捉えること」が挙げられた。これらのことから、物語を読む上で登場人物についての叙述に着目することは、児童に物語を読む力を付けるためにも重要であることがうかがえる。しかし、物語の学習になると叙述に着目せずに、自分の想像や感覚だけで解釈をつくる児童が多く、話合いや発表の場面でも内容が深まらなかった。児童が叙述に着目できない原因は、作品を読む目的がはっきりしていないためではないかと考えた。
そこで、本研究では「作品の魅力を伝えるパンフレットづくり」を取り入れた単元を構成した。パンフレットを読んだ人がその作品を読みたくなるようなパンフレットをつくるためには、登場人物やあらすじの紹介だけでなく、作品の魅力について迫る必要がある。このことにより、児童の中で物語を読む目的が明確になる。「パンフレットづくり」を通した活動と同時に、その作品の魅力に迫るため、5つの観点(①登場人物、②中心人物、③出来事、④大きく変わったこと、⑤おもしろさ)をもとにした発問とノート指導について工夫することで、児童が登場人物についての叙述に着目しながら作品を読み進め、物語の魅力に迫る姿が期待できる。
物語の学習になると叙述に着目せずに自分の想像や感覚だけ解釈をつくってしまう児童が多かったが、「作品の魅力を伝えるパンフレットづくり」を単元の柱とし、実践に取り組んだところ、形にして誰かに伝えようとすることで、児童の学習意欲が高まることが分かった。叙述を根拠に自分の意見を発表し、叙述に立ち返りながら学習を進め、自らの言葉で作品の魅力をパンフレットにまとめていこうとする児童の姿が見られた。