ボール運動の授業では、意欲的に動ける児童と動けない児童の差が大きい。技能の差だけでなく、どのように動いたらよいか分からず、ゲームに関われないという思考面での差も大きい。どの子も進んで運動に関わり、楽しさを味わうために、どう動いたらよいかを考え、判断する力を養うことが必要であると考える。そこで、高学年「サッカー」と「ハンドボール」の2実践において、次の2つの手立てを行った。
1 状況を判断する力を高める学習課題の設定
児童の運動への思考や技能の高まりに即した課題を設定した。単元の前半は個人の動きに焦点化して設定した。ボールを持っている時の動き、ボールを持っていない時の動きに分けて、学習課題を設定することで、どう動いたらよいか分からない児童も、考えてから動く経験をすることができた。単元後半は、個人の動きとチームの動きをつなげる学習課題を設定した。
2 状況判断を意識化する個人チャートの作成
一人一人が自分の運動能力に合わせた個人チャートを作成した。児童が自分で考え、必要だと思う動きやそのわけを書き込んでいく。各時間の学習課題に合わせて、見つけた動きを選択したり、矢印でつないだりして書き込んでいくことで、動ける児童も、なかなか動けない児童も、自分なりのチャートを作成できた。このチャートを手掛かりに、状況を判断して動く場面を経験することができた。
2つの手立てにより、動きを意識してゲームに参加し、状況を判断する力が高まり、フリーになってパスをもらったりシュートしたりする動きを高めることができた。児童の状況を判断する力を高めることを学習の入り口として、動きを選択できるようにゲームを設定することは、ゲームでの動きの質の向上につながることが分かった。今後も、サッカー、ハンドボール以外の種目でも、同様に成果が表れるか研究していく。