これまでの理科授業において,生徒は,観察・実験をグループで行い,実験データなどを収集しようと意欲的に行っている。しかし,実験結果をより正確に得ようと努めデータをとることはできるが,レポートの考察には,結果をまとめただけだったり,考察内容が十分に記述されなかったりして,記述内容が高まらない生徒が少なくない。
そこで,課題を自分のものとしてとらえて追究し,自分の意見をもち発表する活動や他者の考えに対して自分の視点をもって質問し,互いに思考が深まっていく授業を行いたいと考えた。
そのために,以下のような授業を計画した。
(1) 実験の予想を仲間と伝え合う活動の中で,相手の予想に対する質問や意見を伝える場面を設定する。ここでは,根拠のある説明になっているか,またその根拠が既習事項と矛盾していないかなどの点で質問や意見をしていくようにする。3人の仲間に自分の質問・意見を伝えるとともに,逆に自分の予想に対して相手から質問・意見も受ける。そして,納得のいく部分の説明について互いに承認し合う。
(2) 実験結果の考察を書いた後に,仲間の考察を聞く活動を組織する。これを重点とする単元において継続的に行う。
①仲間の考えを聞き,不十分な部分を補完するような評価を行う。
②3人に質問を行う。反対に質問を3人から受ける。
③その活動を行った後に自分の考察に戻り,考察Ⅱとして,考察を完成させる。
1年時には「電流とそのはたらき」,2年時には「運動とそのはたらき」や「化学変化とイオン」において実践を行った。その中で,より粘り強く予想の交流検討を行うには,相手に伝わりやすい意見をまとめることや伝え方を考えること,その考えをもって別の意見の仲間に批判的な視点で意見をすることが有効であるといえる。また,実験後の考察をまとめる場面では,他者に伝えることで自分の伝えたい内容が精査されて焦点化し,さらに批判的に相手の意見を聞くことによって必要な情報が述べられているか確認する力がつく点が有効であるといえる。これらのことをもとに予想や結果に対する考察の交流検討の方法について手立てを講じ,その有効性について検証した。