授業の中で扱う自然事象には,植物や地層など実際に触れることができて具体的にイメージしやすいものと,原子や分子,電流や電圧のように,触れることができないため具体的にイメージしにくいものとがある。そのような事象に対し,生徒から「どう考えてよいかわからない」「考えることが面倒くさい」とつぶやく声が聞かれることがある。目に見える観察・実験の結果から目に見えない対象のふるまいについて考えなくてはならないところに生徒がつまずく一因があると考える。また,実験の結果は記録できても,考察をどうやって書いたらよいかわからないため書くことをためらう生徒が多くみられた。それは,私が生徒の考えを引き出しながら追究する過程をうまくできていなかったからだと考える。
そこで,本研究では,目に見えない現象に対して共通のモデルや図を使って生徒が推論し,交流し合うことで,自分の考えを深めたり修正したりしながら,現象の仕組みを説明できる姿を目指したいと考え,次の手立てを講じることとした。
1 粒子モデルを用いて,自分の考えをまとめる活動の組織
2 追究の見通しをもつための既習カードの活用
3 互いの考えを補完・修正するための話合い活動の組織
現象を自分の考えで説明する際に絵やモデルで説明することは生徒にとってわかりやすくイメージをしやすくする。さらに,自分の考えを互いに発表し合う活動を行い,自分の考えを修正したり補ったりする。具体的には「粒子モデル」「既習カード」「話合い活動」の3つの手立てで実践を行った。まず,現象に対して考えやすくするために「粒子モデル」を操作し,試行錯誤しながら自分の考えを表出しやすくした。その際に今までの既習事項が書いてあり課題に対して筋道を立てやすくなるように「既習カード」も使用しながら考えさせた。次に学びを深めるために自分の考えを発表し合い,修正し合ったり補ったりする「話合い活動」を行った。この活動では,「粒子モデル」「既習カード」を自分の考えを伝える手立てとして利用したり付箋で意見を書き会ったりすることで,班の考えを練り上げていった。このようにして,自ら考え,学びを深めることができる生徒の育成を目指した。