数学的な思考力・表現力を育成するために、算数的活動及び言語活動の充実が求められている。授業では、自分の考えを説明する活動が行われることが多く、そのため児童は、自分の考えを説明するために具体物、半具体物の操作、図、式、算数的用語など様々な数学的な表現方法を用いている。その表現方法は学年や学習内容が進むにつれて、徐々に抽象化されていく。数学的な思考力・表現力が高まった姿とは、児童が表現方法を抽象化できたり、自分で表現したことを用いて他者に説明したりできる姿であると考える。しかし、小学校低学年の児童は「具体物→半具体物→図→言語化→式」と表現方法の抽象度が上がるにつれて、抵抗感をもつことがある。特に半具体物から図に移行するときは、その抵抗感は大きい。しかし、図を用いることで、解法を導き出したり、自分の考えを説明したりしやすくなることから、自ら図をかき、説明できることは非常に重要なことである。そのために、次のような手立てを用いて、半具体物操作から図に移行する際の抵抗感を減らし、図を用いて自分の考えを説明する姿を目指した。
1 半具体物の操作場面に近い図の提示
半具体物の操作場面をそのまま図にしたものを与えた。
2 思考を可視化するための図の指導
自分が考えていることを、図の中に表す際に用いる表現方法を指導した。
3 他者の表現の意図を読み取る場の設定
途中までかいた児童の図を提示し、「なぜ、このようなことを書いたのか」と全体に問い、その表現の意図を明らかにした。また、その図の続きを考えさせた。
児童が図という数学的な表現を用いて、問題を解決したり、自分の考えを他者に説明したりすることができる姿を目指して、今後も研究を継続していく。