中学校学習指導要領では,基本的なねらいの一つとして「知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視すること」が挙げられている。また,社会科の改訂の要点でも「言語活動の充実の観点から,社会的事象の意味,意義を解釈する学習や事象の特色や事象間の関連を説明する活動を通して,社会的な見方や考え方を養うことを一層重視した。」とある。これらは,知識偏重の教科書の網羅的な学習に終始するのではなく,習得した基礎的・基本的な知識,概念や技能をもとに,自ら考える力,判断する力を身につけさせることこそが重要であることの指摘であると捉える。
しかし,自分の授業を振り返ると,知識の習得が中心となり,社会的な事象の関連や背景の考察など,考えを深めさせる取組が少なかったために学習活動がマンネリ化し,生徒の思考を深めることが不十分であったと考える。そこで,次の2点から生徒の考えを深め,思考力・判断力の育成を図りたい。
①段階的に考えを深めていくための単元構成の工夫
基礎的・基本的な学習事項などの習得した知識等をもとに,自分の考えを深める「活用」の場面を意図的に設定する。
②様々な視点から考えを深められる学習課題の設定
「社会科における思考力」とは,社会的事象の意義や特色,事象と事象の相互の関連を明確にし,様々な視点から捉えたことをもとに,合理的な根拠をもって自分の考えを構成する力であると考える。思考力または社会的な見方や考え方の育成とは,生徒が習得した知識をもとに,様々な視点をふまえた上での自分の考えをもつことができた状態のことであると捉える。そのために,社会的事象について複数の視点,それぞれの考え方(立場・状況)が異なる教材を準備し,資料をもとに考えさせた上で自分の意見をもたせたい。