私が今まで行ってきた跳び箱運動の授業では,開脚跳びや台上前転などの基本的な支持跳び越し技はできるが,発展技である「首はね跳び」,「頭はね跳び」に取り組もうとする児童の姿がなかなか見られなかった。それは,授業において発展技である「首はね跳び」、「頭はね跳び」ができるようになるための手立てや支援,仕組みが足りなかったと考えられる。そして、私は児童に跳び越し方のイメージをもたせることができず,互いにかかわる機会が少ない授業を展開していたと振り返った。
そこで、本実践では,児童に跳び箱を跳び越すためのイメージをもたせるための手立てを講じ,互いにかかわり合いながら跳び箱運動に取り組む機会を意図的に設定し,児童が跳び箱運動の楽しさや喜びを味わいながら,跳び越し技の技能を向上させていく指導法の追求を目指し実践を行った。そして、互いにかかわり合いながら跳び箱運動に取り組む機会を生む取組として「シンクロ跳び」を単元構成に入れて授業を展開した。
本研究では、単元の前半で跳び越すためのイメージをもたせるために、次の4つの手立てを講じた。
①学習カードに跳び越し技に対する気付きや友達へのアドバイスを書き留めさせた。
②跳び越し技のポイントを掲示物に記入して共有させ,いつでも見ることができるようにした。
③開脚跳び・台上前転につながる基本運動を取り入れ,基礎感覚を養った。
④跳び越し技の習得を助けるために,3つの位置(踏み切り,着手,着地)が視覚的に分かるようにカラーテープを貼ったり,易しい場を設定したりした。
また、単元の後半ではかかわりを生むために「シンクロ跳びの発表会」を行う時間を設定した。そのための手立てとして、次の3つの手立てを講じた。
①児童を5グループ(1グループ4・5人)に分けてグループリーダーを決めさせ、演技の内容を相談させた。
②演技をそろえるポイントを考えさせ、互いの動きを見て動きを合わせるように言葉がけを行った。
③デジタルカメラを使い、演技や練習風景を撮影し、自分たちの動きを客観的に見ることができるようにした。
これらの手立てを単元の中で講じていったことで、児童の姿から次のような成果を得ることができた。
①跳び越し技の技能が低い児童にとってのシンクロ跳びのよさは、友達の跳び越し方を観察したり,周囲からのアドバイスを受けたりして,跳び箱運動を楽しみながら行い,技能を向上させるとともに動きがそろった喜びを感じることができるようになることである。
②跳び箱運動を得意とする児童にとってのシンクロ跳びのよさは、友達にアドバイスをすることで客観的な視点で跳び箱運動の技術を理解することができたり,友達の動きにそろえるために自分の体を意識してコントロールしようとしたりすることによって,より完成度の高い技能を習得できる。
以上2点について成果を得ることができた。しかし、課題も見つかった。シンクロ跳びを取り入れた6時間目(新しいことに取り組んでいく時間)の手立てを今後考えていく必要がある。児童が抵抗感なくシンクロ跳びの学習に取り組めるような手立てや支援を学んでいきたい。