ポジティブ思考によって問題解決を図る体験をすることで,自分の強みに目を向け,追究していくことのできる児童を育てたい。そのような思いからこの単元を構想した。
これまでのキャリア教育は,職場体験をしたり様々な職業従事者に学んだりすることにより,よき職業従事者あるいは従業員としての義務感や労働感を学ぶような実践ばかりになりがちであった。そういった課題を解決するために,児童に会社の起業・運営を体験させる起業家教育(アントレプレナーシップ教育)が様々な形で実践されている。しかし,先行実践の多くは,既存の市場において地域特産の商品などを販売する実地の活動を通して経済活動の意義について学ぶという性格が強かった。
小学校のキャリア教育では,職業や経済の仕組みといった外部要因に向けた学びのみをさせることは望ましいことではない。小学校段階では自分の強みを知り,自己の強みを生かせる場面を追究し,更新していくことが何よりも重要である。
そこで,本実践では,自己及び自学級の強みを模擬会社の商品力の元と捉えさせ,それをどのような形で具体化していくことができるかを考えさせる中で,自己の強みについての追究を繰り返させることとした。また,その際には,自分の考えを思考ツールを用いながら可視化させ,客観的に捉えていけるように工夫することとした。また,問題解決場面では,問題解決のための観点やスキルを与えてくれる人材を活用し,自己の強みをどのように模擬会社に生かせるかについての観点を得られるようにした。
常に課題を自他の強みを根拠にして考える活動を繰り返すことで,単元の初めで自己の強みについて具体的に記述することのできなかった児童も,次第に自分の強みを具体化し,その強みに基づいて考えを進めることができるようになっていった。