私は,社会科の学習を通して,実社会で起こっていることに関心をもち,将来よりよい社会をつくる一員になろうという思いをもつ子どもを育てたいと考えている。
そのためには,問題解決的な学習を基に更に授業改善を進める必要があると考えた。つまり,子ども自らが解決していくため問題をもち,課題を追究し,解決した結果をまとめるといった学習過程を大切にしたい。本研究では,学習課題の設定に焦点を当てた実践を発表する。
子どもに問題をもたせるためには,既習事項や生活経験に起因する子どもの思考とずれが生じる資料を提示する必要がある。しかし,実際には,学習内容につながる社会経験が乏しかったり,個々の差があったりすることが多く,子どもの思考とずれを生じさせる資料を提示することが難しいと感じていた。そこで,社会科の学習で2つの事例を順次扱い,2つの事例の相違点を活かすことで,子どもが問題意識を高め,主体的に学習課題を設定することができるようになると考えた。研究仮説を検証するために,以下の2実践を行った。
1つ目は,沖縄県と北海道の2つの事例を扱った実践である。沖縄県を事例に,人々が自然環境に適応した暮らしをしていることについて,家の造り,農業,水産業,観光を観点に学習した。本時では,沖縄県について学習したことや生活経験に起因する子どもの思考と,北海道民の暮らしぶりとの間にずれを生じさせることにより,問題意識をもたせ,学習課題の設定につなげていった。
2つ目は,米作りが盛んな地域と柿づくりが盛んな地域の2つの事例を扱った実践である。南魚沼市を事例に,自然環境や地理的条件を生かして米を生産していることや,生産量を高めるため,日本の農業の問題点を克服するための工夫や努力について学習した。本時では,米作りが盛んな地域の学習に起因する子どもの思考と,柿づくりが盛んな地域の土地の特徴との間にある相違点を活かすことで,子どもが問題意識をもち,学習課題の設定につなげて学習を進めた。