現行学習指導要領における改善の基本方針として,文学的文章の詳細な読解指導の見直しがある。特にファンタジー作品を扱った指導では,「ファンタジーという言葉のもつ曖昧さと指導の難しさゆえ,その本質や,表現方法の特質などに一定の共通理解がされないまま,文学教材の中で,リアリズム教材と一くくりにされた指導が行われてきた」(渡辺,松川2004)と指摘されている。
ファンタジー作品の魅力とは,「たくさん証拠はある。けれども,決定的には答えが書いていない。そこがファンタジー作品の面白さ」(佐藤2013)であると捉える。したがって,ファンタジー作品を扱った読解指導においては,子どもたちに作品の中で不思議に感じる部分を問い,一つの結論に収束していこうとするのではなく,明確に答えが書かれていないからこそ,「そうかもしれないし,そうじゃないかもしれない」というファンタジー作品のなぞを両面的に読んでいくことが大切であると考える。そのような指導の中で,子どもたちは,幅広い考えを受け入れながら作品解釈をより深いものにし,豊かな読み手として育っていくのである。
そこで,本研究では,ファンタジー作品のシリーズ読みを生かした作品のガイド作りに取り組むこととした。単元の始めには,ファンタジー作品にあるなぞについて考え,子どもたちが話し合ったことを整理した,作品のガイドを教師が作成して提示する。これにより,子どもが,作品のなぞを両面的に読む面白さを捉えていく。そして,その後,同じシリーズのファンタジー作品を提示し,作品のガイドを作成する言語活動を設定する。すると,子どもたちは,その読み手を意識し,ファンタジー作品のなぞを両面的に読み,その面白さを伝えようとしていくと考える。
以上の活動を行うことで,子どもたちがファンタジー作品の作品解釈を深めていくことができると考えた。
<参考文献>
佐藤佐敏『思考力を高める授業 作品を解釈するメカニズム』三省堂2013.5 P160
渡辺良枝,松川利広「ファンタジー教材の『読み』と『書き』の連動に関する基礎的研究」『教育実践総合センター研究紀要』奈良教育大学2004.3