学習指導要領の改訂により,本や文章を読んで感じたことや思ったこと,考えたことなどを一人一人の児童がまとめ,発表し合う指導事項が,新設されている。特に,中学年の読むことの指導事項エ・オでは,「自分の考えをまとめるために,文章の要点や細かい点に注意しながら読み,引用や要約することを示している。」とあり,あらすじをまとめることの意味が示されている。自分の考えや感想を組み立てるためには,文章の中心や大事な事柄を抜き出したり,まとめたりできる力が必要であると言える。
しかし,文学的文章の学習において,あらすじを書かせる際に次のような児童の実態が見られた。
・本文を抜き書きし,だらだらと文章が続いてしまい長くなってしまう。
・話の中心となる筋を捉えられず,どの出来事を書いていいか分からなくなってしまう。
学習指導要領解説の要約の説明を見ると,「『要約』とは,目的や必要に応じて,話や本,文章を短くまとめることである。元の文章の構成や表現をそのまま生かして短くまとめる要約と,自分の言葉で短くまとめる要約とがある。要約は,要約するときの目的や必要に応じて元の文章のどの部分を取り上げるかが変わってくる。」と書かれてある。ここでは,「元の文章の構成や表現をそのまま生かして短くまとめる」要約と,「自分の言葉で短くまとめる」要約の2種類の方法があることが示されている。特に,「目的や必要」に応じてまとめ方が変わってくることをおさえる必要がある。
あらすじを書くことができるようにするためには,あらすじを書くための「目的や必要」を明確に設定していくことが大切である。
本研究では,文学的文章の指導において,あらすじを書くことができる児童の育成を目指す。そのために,2つの手だてを重んじ実践を積み重ねた。
1つ目は,あらすじを書く目的を明確にすることである。2つ目は,相手意識や分量を意識した枠を提示することである。
これらの手だてにより,児童は目的に応じたあらすじを書く力を高めることができる。児童はあらすじを書くことを活かして,作品について自分の考えや思いを形成していくことができると考える。