道徳の授業において,各自の考えや思いを表出させたいと願い実践した。私の授業では,考えが書かれていても発言しない,主張の強い児童の考えに流される等の様子があった。改善策として,①「安心して自分の考えが表出できる雰囲気作り」と②「いじめという実際に遭遇する可能性の高い,自分のこととして考えられる題材」を用いた。
①については,ファシリテーションの手法を参考にした。人の考えや意見を否定しないことを基本に,次に挙げた話し合う時のスキルを用いた。
・考え(発言)を掘り下げる質問 ・すでに出た考えとつなげる質問
・発言の少ない友達に問う言い方 ・まとめ(要約)に向けた言い方
である。(参考文献:みんなが主役!わくわくファシリテーション授業 新潟日報事業者)
②については,教師のいじめに遭遇した体験をもとに話し合わせたり,「私のせいじゃない」(岩崎書店)等の絵本を用いて考えさせたりした。最後は,いじめをなくすために自分たちにできることを考えさせる。そこに,内面的な道徳的実践力はもちろん,行動に結びつくような強い思いの表出を求める。
秋葉区の研修会では,話合いは目的ではない,本音や葛藤の出る道徳的価値が求められる,各班の話合いをもとに全体で価値を確認する場面が必要であると助言をいただいた。その後,修正の授業を行っている。9月上旬現在の成果として以下の2点の様子が見られた。
・話し合いに消極的で面倒がる児童2人に,話合いをリードするような積極的な態度。
・「~する」と言い切ったり,発言や行動の方向性を示したり,実際の行動にうつそうとしたりする記述(児童の94%)。
これは,人の考えや意見を否定しないというルールの外に,互いの考えのよさを認め合う話合いのスキルが影響したと考える。また,授業の手法として,①最初の考え,②話合い,③最後の考えを基本としたため,考えが補足・強化されたり,認められて自信をもったりしたと分析している。
課題としては,話し合いの進み具合の把握,教師の全体へのかかわり(価値の共有)のあり方だ。机間支援時の話合いの整理,論点の確認,そしていじめに関する確固たるメッセージを教師がもっていることが必要であると考える。今後さらに実践を重ねていこうと思う。