これまでの武道(柔道)における授業では,授業者が「型」を一斉に指導し,生徒は反復練習によって基本動作や技の習得を行ってきた。しかし,「なぜその技が有効なのか」「どうするとより確実に技をきめられるのか」など,生徒が問題意識をもちながら課題に取り組んで技を習得していくという姿が見られなかった。そこで,生徒自らが課題をもって仲間と工夫しながら技を習得し,習得した技を試合に生かしていく授業を目指すこととした。本単元では安全面を考慮して,固め技(おさえ技)を習得する場面で,どのようにしたら一本がとれるおさえ込みができるかを生徒同士で話し合い,仲間とともに工夫しながら練習し,修正する交流活動を組織した。講じた手立ては以下のとおりである。
① 試合の中でおさえ込みで一本になるシーンを動画で紹介し,関心をもたせる。ただし,おさえ込んでいる様子はモザイクで隠し,どのように相手をおさえ込んでいるか生徒に考えさせる。
② 「おさえ込み」の条件,「解けた」の状態を示した上で,3人一組のグループで,おさえ込む際の『腕の使い方』『胴体の使い方』『脚の使い方』をポイントとして,相手に対してどのように自分の体を使っておさえ込めばよいかを交流させる。
③ 交流活動によって考案したおさえ込み(Myおさえ技)によって一本がとれるかを確かめるために,他のグループの生徒と,おさえ技の簡単な試合を行う。
あらかじめ,おさえ技を「型」として生徒に指導するのではなく,おさえ込みの条件を満たしたおさえ方を考えさせることで,生徒たちは「一本がとれるおさえ込み」を仲間と試行錯誤しながら考案する活動を展開することができた。また相手をおさえるための身体の使い方について考えることにつながり,「型」にとらわれることなく,変化する相手の動きに柔軟に対応できる使い方を学ぶことになり,より実戦的なおさえ技を習得することにつながった。