実践の概要
本実践では、生活の中で使われている身近な家庭用電化製品等の制御に目を向けさせることから始める。そこから目的に応じた制御の方法を考えていく中で、プログラムに組み込まれているしくみを学習していくことができるようにする。
題材としては、現在、一般家庭において普及しつつある自律走行型の自動掃除ロボットを取り上げる。また、動きをプログラムによって制御していくために、計測・制御学習用ロボット「制御学習プロロボUSB」(山崎教育システム株式会社製、以下『プロロボ』という)を自律走行型の自動掃除ロボットに置き換えて使用する。
題材の目標を「目的や状況に応じたプログラムを試行錯誤しながら工夫して作成することを通して、情報処理の手順を理解する。」と設定し、次の4つの手立てを講じた。
(1) 生徒の興味・関心を高める課題設定
(2) プログラムが容易な教材を使用
(3) 多様なプログラムを保障する状況設定
(4) ペア学習の組織
これらの手立てを実践し、授業を進めるなかで次のような成果が得られた。
授業の導入で、自動掃除ロボットのインターネットの動画を視聴させ、さらに実物を生徒に提示し、生徒の目の前で動作する様子を確認させた。これにより、生徒の興味・関心は高まり、プロロボの動きと自動掃除ロボットの動きとを関連付けることができた。
フローチャートをそのまま命令語として使用できるソフトウェアを利用した。このことで、視覚的な効果が高く、生徒はプログラムと実際の動きを比較しながら何度も試行錯誤し、課題解決しようとした。
スタートからゴールまで最小限のゴミを拾うプログラムを作成した生徒の中には、発展的課題として全てのゴミを拾ってゴールするという目標にチャレンジする姿も見られた。うまくいかないところを相談しながら問題解決していく姿や、うまくいったプログラムについて教える様子が見られた。
授業後の評価から、与えられた課題をほとんどの生徒が達成できたと考えられる。しかし、プログラムの複雑化に伴い、課題達成できた生徒の割合は6割にとどまった。
これらの成果を踏まえ、「生徒が意欲的に課題に取り組み、課題を解決していく状況設定」について今後も研究していくこととする。