長岡聾学校は、聴覚障がいの部門と知的障がいの部門(高等部のみ)から成り、聴覚障がいの部門は、幼稚部、小学部、中学部、高等部および専攻科まで、幅広い年齢の聴覚に障がいのある幼児、児童・生徒の教育を行っている。そして、教科学習とともに、語彙の習得、コミュニケーション方法、職業教育などの指導を行っている。通常の学校に準じた教育を行うとともに、聴覚障がいに対する専門的な指導が求められる。
当校生徒の実態として、聴覚に障がいがあるために、日本語の習得の遅れや抽象的な概念の発達に遅れがある。そのため、教科指導においては、指導方法や指導内容の精選、教材教具、そして生徒への働きかけなど、様々な配慮・工夫が必要である。
まず、その1つは、視覚的な支援などによる情報保障である。特に、パワーポイントを活用した視覚的・動的教材を作成することにより、音による情報の制約を視覚的に補い、聴覚障がい生徒の理解の手助けとなる。このことで、理科の教科学習に必要な概念や意味の理解など、教科指導上での生徒が感じる困難性を克服することができる。視覚的に理解が困難な抽象的な概念の操作が必要とされる内容について大いに活用してきた。
2つ目は、教科指導の中での言語指導である。聴覚障がいのある生徒は、音や音声言語による情報を受け取りにくいので、結果として言語発達が遅れる場合が多い。発達段階で考えると、幼少期からの生活言語の習得の遅れにより、教科学習を十分に展開できる言語発達の段階に達していないことが学習の遅れの一つの要因になっていると考えられる。「9歳の壁」という問題があり、読書力・文章力が小3~4年程度で停滞してしまっている聴覚障がい者が多いことが報告されている。よって、体験的な活動ややりとりを通して内容を理解しながら、言葉を正しく理解したり表現したりする力、言葉で考える力、文章を正確に読んだり書いたりする力を育成することが大切である。体験と言葉が一体化するような支援が必要不可欠である。
3つ目は、理科の学習と聴覚障がい理解とを関連付けた授業展開である。中学校理科の指導内容には、1年生「音」、2年生「感覚神経・聴神経」など、聴覚障がいによりなかなか体験的な理解に困難を示す単元がある。そのような内容について、指導方法や教材教具を工夫することで理解につながり、また自身の障がい理解にもつながるものと期待している。
長岡聾学校に赴任して3年目。上記に挙げた支援の視点について、私が今までに行ってきた数々の実践を今回発表する。