理科に対する自信や学ぶ必要性を高めるには,生徒自身が「分かる」体験を積み重ねていくことが必要であると考える。「分かる」ための手立てとして「かかわり合い」と「粒子モデル」を用いながら学習を進めていった。
学習指導要領では、『粒子などの基本的な見方や概念を柱として内容を構成し、基本概念の一層の定着を図る』とあり、中学校の化学分野では、粒子概念を取り入れて学習することになる。2年生の「化学変化と原子・分子」3年生の「化学変化とイオン」では、まさに粒子概念が必要になってくる。しかしこの考え方に抵抗を持つ生徒は少なくない。物質が粒子で構成されていることを目できちんと確認することはできないことが、粒子概念の習得の難しさの原因になっていると考えた。
粒子概念の獲得に有効な手立てとして「粒子モデル」がある。粒子モデルは物質の諸現象を半具体物で表すことができ、自分たちの目で確認しながら考えを深めることができる思考ツールである。粒子モデルを使いながら諸現象を説明したり理解を深めたりできる授業に取り組んだ。粒子モデルを授業で繰り返し行ったことで、生徒は書くことに対して自信をもち、自分の考えに間違いを恐れずに書くことができるようになる変容がみられた。生徒自身が自分の考えを表現する活動では、粒子モデルが有効であり、自分の考えを整理する上で欠かすことができないものであることがわかった。
また、生徒の思いや考えを広げたり深めたりするには,書いたものをもとに「かかわり合う」活動が重要である。授業では課題の初めに自分の考えを粒子モデルを用いて表し、その考えをもとに教師と生徒や生徒同士の対話を行う活動を行った。対話をする活動の中で生徒は自分の考えを確信に変えたり、考えの矛盾に気付き考えを改めたりする姿がみられた。「かかわり合う」活動を通して、生徒自身が考えたことを粒子モデルを用いてより具体的に表現できるようになったことから科学的な思考力を高めるために有効であることがわかった。