日常生活に即したり、解決したいと思ったりするような課題を提示することで、生徒は目的意識を高めて実験観察を行うと考えた。また、この目的意識は、課題解決のための実験計画を練り上げる場面や、結果を分析・解釈する過程で、生徒の探究心を深く持続させる。このことにより、実感を伴った理解が可能となり、科学的な思考力が向上するのではないかと考え、本研究を行った。
目的意識をもたせる手立てとして、次の4つを行う。
①生徒のレディネスを把握する。
②ICT機器を利用した視覚的なアプローチを行う。
③手で触れることのできる実物教材を使用する。
④日常生活に即したり、解決したいと思ったりするような課題を提示する。
科学的思考力を高める手立てとして、次の3つを行う。
①ワークシートの実験計画を、言葉だけでなく図や絵で表現するよう書き方の指導を行う。
②見本となる生徒の記述や図などワークシートの内容をスキャンして画像資料にし、タブレット端末とプロジェクターで映し、全体に紹介しながら称賛する場面を取り入れる。
③発表が苦手な生徒が自信をもって発表できるよう、説明文の型を示し、予想や実験結果を穴埋め形式に記入できる発表原稿カードを使用する。
実践として第一学年、変動する大地の単元で研究を行った。ICT機器を活用し、マグマが噴火口から吹き出ている映像を示した後、「火山の形は何によって決まるか?」という課題を全体課題として提示した。ワークシートをB4サイズにし、課題、予想、指定された器具を使用した実験計画、実験結果、考察、まとめを一枚にまとめ、図や絵で考えを書くように支援した。授業では、予想の段階で10班ある班のうち、6班がマグマの粘性によって火山の形が決まると予想した。実験装置は、袋の中に小麦粉と水の混合液体でつくったマグマモデルを入れ、袋の口を板に固定し、手で混合液体を袋の上から押し出すことで、マグマが噴火したモデルを表現した。水の量を調節することでマグマモデルの粘性が変わることを利用し、マグマの粘性が大きければ溶岩ドーム型の火山ができ、粘性が小さければ楯状火山型の火山ができるということを考察することができた。また、発表原稿カードを用いて実験結果と考察を発表したことで、論理的な発表を行うことができ、生徒は耳を傾けて内容を聞いていた。実践の次時では、生徒のワークシートをスキャンして画像化したものを、全体に紹介して称賛した。
今後は、第二学年「電流とそのはたらき」、第三学年「運動とエネルギー」の実践を通し、生徒の発言や記述、変容をとらえることでどのように科学的思考力が高まっていったのかを検証する。更に実践を繰り返し、より効果的な指導方法を追究していく。