OECDのPISA調査において、思考力・判断力・表現力等を問う読解力や記述式問題、知識・技能を活用する問題に課題があることが明らかになっている。また、科学的な思考力、表現力の育成を図るためには、観察・実験の結果を分析して解釈する能力や、導き出した自らの考えを表現する能力の育成が重要である。教科の特性から、レポート作成、仮説・考察の発表時にそれらの能力を育てることができる。問題解決場面で、根拠を示しながら自分の考えを表現することが必須だからである。根拠を示しながら自分の考えを表現することは、事物・現象を分析、解釈して他者に伝えることであり、日常的な積み重ねにより育成される能力である。また、これまでの授業を振り返ると、観察・実験で得られた事実を客観的にとらえ、科学的な知識や概念を用いて合理的に判断し、それらを活用するまでは到っていない。これは、根拠に基づいて意思決定する経験が不足しているためと考えられる。
そこで、根拠を示しながら自分の考えを表現することを繰り返し経験させる。問題解決場面で使用する根拠を『データに基づく根拠』『既習した知識や体験による根拠』『たとえ話や仮説に基づいた根拠』『友達の考えに基づいた根拠』の4つに分類する。自分の考えを表現する際には、どの根拠にあてはまるのかを選択させる。このことで、事物・現象に対して、どの生徒も根拠をもつことができた。さらに、根拠を含んだ話型を用いて、表現する活動を充実させた。多くの根拠を考えることができるようになり、発表や説明する活動が充実した。また、根拠を示しながら他者と意見交流をすることで、仲間と共に自分の考え方の変容を実感することができるようになった。
これらの経験を繰り返し行うことで、理科の目標である科学的な見方や考え方を養うことにつながり、事物・現象から科学的な根拠を見つけ出すことができる生徒が増える。