子どもが社会的事象と出会い,今までの認識とのずれから,調べたことや経験・知識をもとに自分なりの問いをもつ。そして,自他の考えの類似点や相違点に気付いたりすることで,納得のいかない部分を確かめたいという思いをもつ。今までの自分の見方・考え方を見直したり,問題を解決したりして,学習を深めていき,友達とのかかわりの中で考えることを経て,子どもが広く,深い見方・考え方を獲得していく。これが,私にとって理想とする授業中の子どもの姿である。
これまでの自分の授業を振り返ると,子どもたち同士に自分の考えをかかわらせ合う手立てが足りないと感じる。授業では,要点を羅列した板書を書いていることが多い。そこで,子どもたちの考えを可視化し,自他の考えの重なりやずれを生む板書にすることで,子どもが考えを深め,新たな見方・考え方を獲得する姿を目指した。
実践は,『板書で見る全単元・全時間のすべて 6年』(2011年 東洋館出版 安野功編著)にある3つの板書パターンをもとにして行った。3つのパターンとは,「時系列型」,「中心資料提示型」,「対比型」であり,実践を重ねることで,それぞれの板書パターンの特性が見えてきた。
「時系列型」は,時間の流れを整理して学習を進めることができるため,ある程度まとまった時間や事象を一般化して考えさせる際に有効である。6年生の歴史の授業などでは,この時系列型を用いることが多い。しかし,実践してみると,子どもの考えの重なりやずれを可視化したり,学習問題を生み出したりすることは難しい板書であるとわかった。
「中心資料提示型」は,一つの教材に対して多面的な見方をすることができるため,子どもの見方や考え方を広げさせる学習に有効である。小学校3年「わたしたちのまちはどんなまち」や「さぐってみよう昔のくらし」の単元で実践を行った。子どもにとっては同じものに対して考えの重なりやずれが見えやすく,授業後には教材に対してより深い考えをもちやすいことがわかった。
「対比型」は,複数の教材を比較することができるため,それぞれを結び付けて一般化する学習に有効である。小学校6年「身近な暮らしと政治」や小学校3年「私たちの市の様子」の単元で実践を行った。子どもにとっては教材間の共通点や相違点を見つけやすく,また自分の考えがもちやすいので,授業後には教材やその背景になっていることに対してより深い考えをもちやすいことがわかった。
このように,その授業のめあてに適していると思われる板書パターンで実践を行い,その板書の有効性を子どものノートの記述等から考察する。