登場人物の心情には,暗示的に表現されていたり,前後の文脈をもとに想像することで理解できたりするものがある。しかし暗示的に表現されている内容まで想像して読むことが難しいという児童の実態がみられた。
本研究では,子どもが想像豊かに読んだり暗示的に表現されている内容まで読んだりすることができるための働きかけとして,次の二つに取り組んだ。
1 読解の指導過程に演劇的活動を取り入れる。
ある場面を実際にやってみることにより,読解の段階では気付かなかった表現やその表現のもつ異なる意味に気付き,描写をもとに想像豊かに読んだり,暗示的に表現されている内容まで読んだりすることができると考えた。本研究では,登場人物の行動と心情に着目させることをねらい,「役割演技」を取り入れた。
2 最初の読みと演劇的活動を取り入れた後の読みとを比較し,自分の読み方を振り返る。
最初の読みと「役割演技」を見合った後の読みとを比較させ,文章だけの時に読めなかったのはなぜなのかを振り返らせることで,自分の読み方の足りなかった部分に気付くことができると考えた。
今回の実践では,1つ目の取組については,「役割演技」をしたりお互いに見合ったりする活動を通して,改めて叙述に目を向けて登場人物の行動を考えたり,今まで気付かなかった表現に気付いたりすることができた。書かれていない登場人物の心情に気付き,想像することができた子どもの姿も見られた。2つ目の取組については,「役割演技」後に役割演技を見て分かったことは何かを振り返らせることを通して,主人公の心情が変化した場面が分かるようになったという児童もいた。しかし,どの叙述の読みが足りなかったのかを振り返らせる手立てが不足していたため,自分の読み方の足りなかった部分に気付くところまでには至らなかった。今年度は,これらの課題をふまえ,さらに検討していく。