新学習指導要領の「図画工作科」の目標の中に「感性を働かせ生活や社会の中の形や色などと豊かに関わる資質・能力を次のように育成することを目指す」とあります。私は「生活や社会の中の色や形などと豊かに関わる資質・能力」という部分に注目し、子どもたちに自分の思いを表現し、形や色などの造形的な見方・考え方を働かせながら、生活を楽しいものにしたり、身の周りにあるものに意味や価値を見いだして造形活動を楽しんだりすることができるようにしたいと考えました。そこで研究テーマを基に、次のような手だてを講じました。
1 子どもの生活経験・体験活動から生み出す題材
教師が子どもと一緒に活動したり過ごしたりする中で、子どもの興味・関心があるものを捉えて題材化しました。すると、題材が教師から一方的に提示されたものよりも、子どもたち自らの中から生まれた題材となり、制作意欲が高まっている様子が見られました。
2 学級経営を基盤とした相互鑑賞
制作途中で子ども同士の相互鑑賞を取り入れました。黒板に全員の絵画などを貼り、仲間の表現のいいところを付箋に書いて貼り合いました。また教師が全体に提示してみんなで鑑賞しました。このようなことで、自分の表現に自信がもてずにいた児童が、自信をもち、別の場面でもその表現方法を使う様子がありました。また仲間の表現の気に入ったところを自分も取り入れる姿もありました。一方、教師が「こうしたほうがいいよ。」「ここは色を塗らないの。」などとアドバイスすると、子どもは困った顔をするときがありますが、子ども同士の対話から生まれたことは、子どもが自分に必要と感じた場合は、自ら工夫に取り入れていきます。
これらの手立てを通して、私は、子どもが自ら思いを豊かにふくらませて表現するためには、思い(主題)をもたせることが大切であり、思い(主題)を表現したいという気持ちが、つくる意欲となり、仲間との相互鑑賞によって、自信を付けたり、新しいことを思い付いたりして、つくりかえ、またつくり続けることができるのだと考えています。
これらの手立てによって子どもの表現に変容がみられることは確かですが、今後も実践を積み重ね、事例を豊富に示していくことが必要と考えています。