体育科の究極的な目標は、「生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を育成すること」 です。私は、運動が苦手な児童にもこの資質・能力を育成することを目指して、1年次では、4年生「大の字回り」において視点を明確にした口伴奏の手だてを講じ、実践研究を行いました。その結果、グループ内のアドバイスが促され、自分の考えを学習カードに書かせることができました。しかし、中学年児童の発達段階では、自分で見付けたこつと仲間からしてもらったアドバイスを明確に区別することが難しく、仲間のアドバイスを生かして自分の考えをもつといった、深い学びへの様相を見取ることができませんでした。
そこで2年次は、壁倒立につながる運動、3年生「だんごむし逆立ち」において、運動の行い方を取り入れた口伴奏の手だてを講じ、体育科における深い学びへの様相を明らかにすることにしました。この手だてにより、児童は、ポイントやこつを意識しながら口伴奏に合わせて運動したり友達の動きを見たりし、仲間のアドバイスを生かして自分の考えを学習カードに書くことで、深い学びを実現すると考えました。手だてである「運動の行い方を取り入れた口伴奏」とは、「だんごむし逆立ち」の動きを着手・脚の振り上げ・姿勢保持の3つの局面に分け、それぞれの局面に「手を着いて」「おしりを上げて」「だんごむし」と口伴奏を添えたことです。学習カードには、3つの局面と口伴奏を絵と共に提示し、自分で見付けたこつや仲間のアドバイスを書き込ませました。
上記の手だてを講じた結果、自分で見付けたこつや仲間からのアドバイスなどの書き込みが増え、振り返りの質が高まりました。また、単元の終わりには95%の児童がだんごむし逆立ちができるようになりました。このことから、口伴奏は、友達のアドバイスを生かして自分の考えをもつといった深い学びを実現し、技能を高める有効な手だてであると考えます。
今回の2年間の実践研究では、振り返りの書き方を限定せず、自由記述により手だての効果を検証しました。深い学びを実現した姿を「アドバイスを生かして自分の考えをもつ姿」とするならば、振り返りの書かせ方の工夫もあるでしょう。今後も深い学びを追求していきたいと思います。