新小学校学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」のもと、児童の学びの過程を質的に高めていくことが求められています。教育界の動向とこれまでの自身の課題を踏まえて、国語科単元を工夫し、授業を実践しました。
1 研究内容
自分の考えと理由、事例との関係を明確にして書く児童を育成するために、次の三つの「つながり」を位置付けた国語科単元を構成しました。一つ目は、総合的な学習の時間と国語科を関連付けた「教科のつながり」です。それにより、相手や目的意識の設定、情報収集、考えの形成、記述の過程で、学びの質的向上を図りました。二つ目は、思考ツールを活用して考えを形成させる「思考のつながり」です。授業では、コアチャートという思考ツールを活用しました。コアチャートの中心部分には自分の調べたい題材や考えの概略、周辺部分にはそれに対する事例を書かせました。三つ目は、読むことと書くことを関連付けた「思考力、判断力、表現力等のつながり」です。考えの記述の前に、児童に別の題材を基に授業者が自作したモデル文を示し、自分の考えとそれを支える理由、事例に関わる文章表現を読み取らせ、書くことに活用させました。
2 研究の実際と成果・課題
授業実践1では、書籍や博物館での見学を通して村上の鮭について分かったことを報告文にまとめて、お世話になった博物館の職員の方々に届けるという単元を構成しました。総合的な学習の時間に収集した事実を扱ったことで、複数の事実を関連付けたり、数値を含んだ具体的な事実を扱ったりする児童の姿を引き出すことができました。授業実践2では、鮭産漁業協同組合での見学を通して分かった鮭に関わる課題とそれに対する自分の考えを提案文にまとめて、村上市役所に届けるという単元を構成しました。授業実践1の課題を踏まえて、コアチャートを板書して全体像を共通理解させたり、接続する語句や文末表現に違いを付けた2種類のモデル文を比較して読み取らせたりしたことで、児童にはより一貫性があり、自分の考えと理由、事例との関係を明確にした文章を書かせることができました。
<参考文献>
田村学,黒上晴夫『田村学・黒上晴夫の「深い学び」で生かす思考ツール』,小学館,2017,2