本研究で扱った単元「人のたんじょう」は、直接、実験や観察を行うことが難しいです。そこで、多くの場合、資料を活用して問題を解決していくことになります。これまでの私の実践を振り返ると、こうした資料を活用する単元では、疑問や調べたいことを全体で共有・焦点化させたのち、疑似体験やインターネットなどの情報を基に問題の解決を図ってきました。しかし、予想を交流する場面での対話があまり弾まなかったり、単元終末時の振り返りで断片的な知識や資料をそのまま書き写したりするなど、学びを深めているとは言えませんでした。そこで、次の2点からその解決に迫りました。
1 論点を明確にして少人数グループで予想させること
妊娠後期(出産間近)の子宮内における胎児の様子について、想像図を描かせて予想させます。これに2時間を充てました。第1時では、個人で想像図を描かせ、それらを共通点や相違点といった視点から分類・整理して論点を共有しました。第2時では、その論点に沿って少人数のグループで対話させることで、より妥当な想像図の形成を図りました。
2 「学習内容」と子どもの「生活や経験」をつなぐモデル実験を行うこと
第2時の対話で、羊水の存在や胎児の呼吸などについて問題意識をもった子どもに、第3時と第4時で合わせて三つのモデル実験を行いました。第3時では、妊婦体験や抱っこ体験、そして羊水の機能実験を行い、羊水の存在や役割を理解させました。児童からは、「だから、産まれるときに水みたいなものが出てくるんだ」や「だから、妊娠後期のお母さんは安静にしなくてはいけないんだ」という気付きを生むことができました。また、第4時では、モデル実験で胎盤の働きを確認しました。ここでも、児童から、「だから、妊娠中のお母さんはたばこを吸ってはいけないんだ」というつぶやきが見られました。
このように、ただ資料で調べるだけでなく、論点の明確化とモデル実験によって、「学習内容」と「生活や経験」で得た知識を関連付けて理解した姿が見られました。
今後も、主体的・対話的で深い学びを具現するため、研鑽を積んでいきたいと思います。