新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」が求められています。しかし、これまでの私の音楽指導を振り返ると、子どもの主体的な学びに弱さがありました。子どもたちに、「こうしたい」という思いが生まれず、教師の思いや解釈を一方的に説明することが多く、楽譜をなぞる授業をしていました。一斉指導では教材曲をすぐに歌うことができる子どもと、時間がかかる子どもに歌唱の技能の差が出てしまい、意欲が低下することもありました。
音楽科において、子どもの学びに向かう力を高めながら、歌唱の表現を高めることができるようにしたいと考えました。子どもが生き生きと自分の能力を生かしながら練習に取り組んだり、すぐに問題解決できなくても仲間の励ましを通して根気強く練習したりと、どの子も満足しつつ、表現の楽しさや高まりを感じることができるような授業を実現したいと考えました。
そのためには、普段実践している授業の過程や問題のもたせ方を見直し、子ども同士が話し合い、活躍する場面を増やしていく必要があると考え、本主題を設定しました。
1 学習過程の工夫(「いいところさがし」や「教師の価値付け」を行う。)
1時間の授業の学習過程を「めあて設定」「見通しをもつ」「グループ練習、追求」「発表」「振り返り」と組み立てます。その中で、次のようことを行います。
(1)「グループ練習、追求」の過程において、教師が、望ましいかかわりや、ねらいに迫る追求をしているグループを見付けて賞賛し、全体に伝える。(教師の価値付け1)
(2)「発表」の過程で、教師が、発表の前に「どんな工夫をしたか」と聞き、工夫を言わせてから発表させる。(教師の価値付け2)
(3)発表のあと、聴き手によいと感じたことや、工夫していると思ったことを発表させる。(いいところさがし)
「いいところさがし」や「教師の価値付け」を常時行うで、以下の点が期待できると考えます。
①子どもが、音楽授業の見通しをもって活動できる。
特に、話合いが進んでいる班は自信をもち、停滞している班には良きモデルとなる。
②「いいところさがし」をすることで、発表での聴く意欲が高まる。
③聴いてもらえる前提があることで、よりよいものをつくろうと追求の質が高まる。
ただ、①②③のことが子どもの姿として現れるには、1回限りの授業では身に付きません。年度始めから経験させていく必要があります。