「主体的・対話的で深い学び」が実現されるかどうかは、「発問」という教師の授業行為にかかるところが大きい。しかし、発問一つの善し悪しを検討しても、実際の授業の中では子どもが十分に思考する姿を引き出せないことがあった。その原因は、次のものと考える。
・子どもに考える必然性がない(発問で問われることが、子ども自身の問題意識になっていない)。
・子どもに考える材料がない(発問に対して、何をもとにして反応すればよいのか分からない)。
そこで、主発問に至るまでに、問題意識を共有したり、考える材料をもたせたりする1段階目の発問を設定することにした。1段階目の発問と2段階目の発問(主発問)による子どもの反応を基に検討することによって、授業展開論を構築したいと考える。
研究領域を文学的文章の読みに絞り、次の2実践の事実から考察する。
・実践① 「ごんぎつね」
→第6場面の語りの変化(視点の転換)について考えさせ、自分の読みを自覚させる授業。
・実践② 「走れ」
→クライマックス場面の主人公の変化を捉えさせる授業。
上記実践から得られた2段階の発問の要件を以下のように整理する。
・論理的に読ませるために、まず直観的な反応を引き出す発問をする。
・物語の深層を読ませるためには、まず表層に着目させる発問をする。
今回の実践では、無意識を意識化すること→自覚的に物語世界を捉え直すこと(実践①)、対比により情報を整理すること→情報を統合して物語世界を捉え直すこと(実践②)という2段階の思考過程が観察された。今後は、2段階でどのような思考過程が想定されるか、類型化をすることでより明確な授業展開論を記述したい。