教育データベース

2018.11.09

中学校

新潟

平成30年度

思春期の難聴生徒たちへの支援を考える

新潟市立白新中学校 野住 明美

 通常の学校・学級で学ぶ難聴児は増えてきている。これは、新生児聴覚スクリーニング検査の導入による難聴の早期発見と早期補聴・療育の効果、そしてインクルーシブ教育システムへの潮流によるものである。当校には昭和50年開設の難聴学級があり、生徒たちは広く市内外から通学してくる。そこで、障がいの社会モデルを理念とするICF(国際生活機能分類)をもとに、聴覚障がいへの支援を整理し、中学校に在籍する難聴生徒への支援のあり方について検討した。
1 研究の実際
(1)ICFから聴覚障がいへの支援を考える。
 ICFモデルを用いて「聞こえにくさ(難聴)」による障がいを捉えると、その支援は次の①~③に分けられると考える。①活動と参加への支援や働きかけ、②環境因子への働きかけ、③個人因子への働きかけである。この三つの枠組から、中学校における難聴生徒への支援を整理した。
(2)支援の実際
① 活動、参加へのアプローチ
 情報保障について検討し、全校朝会や生徒会朝会などの集会では、スクリーンを立ててPCによる文字入力を投影することにした。
② 環境因子へのアプローチ
[障がい理解授業の実施]
 平成29年度の2学年2クラスの道徳の時間に難聴疑似体験を取り入れた難聴理解授業を、学級担任と連携して行った。
[難聴への理解・啓発活動]
 全ての学年の学年朝会において難聴理解・啓発の講話を実施することにした。
③個人因子へのアプローチ
[自立活動の指導の工夫]
 自立活動の指導のうち1時間を集団での活動とし、ファシリテーションの手法を用いて自分たちの日常生活での困難をどうやって解決していくかを考えていった。また、7月には難聴である大学院生の方から自身の経験を語ってもらう「先輩と語る会」を行った。
3 成果と課題
 全校朝会や集会などでのスクリーンによる情報保障は、当校では当たり前になりつつある。スクリーンによる文字の情報保障は、難聴児だけではなく、聞くことに困難をもつ生徒にも、話をうっかり聞き逃した場合にも便利なものであり、視点を変えるとユニバーサルデザインの支援にもなると考える。
 今年度入学してきた難聴生徒3名は、徐々にではあるが興味のあることに積極的に取り組み、自身に必要な支援を周囲に伝えることができるようになってきた。
 安定した人間関係があるからこそ、人は自己実現に向かっていけると考える。「難聴があるからできない」とあきらめるのではなく、「難聴がある自分だから○○したい。こうなりたい」と自己実現していける生徒の力を育てられるように、試行錯誤しながら日々の支援を充実させていきたい。