平成32年度から全面実施される新学習指導要領では、「体育や保健の見方・考え方を働かせ、課題を見付け、その解決に向けた学習過程を通して、心と体を一体として捉え、生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を育成すること」と述べられている。つまり、問題解決型の学習過程を組織する中で、運動の価値や特性を味わわせたり、他者との対話を通してよりよい解決策を見いだしたりしながら、生涯スポーツの実践者の基礎を育成することが求められている。
そこで、ネット型ゲームにおいて、どのような学習過程を、どのような視点で組織すれば、児童が運動の特性を味わい、生涯スポーツの実践者の基礎をはぐくむことができるのか検証した。
1 研究内容(手だて)
1単位時間を、ゲームで挟んだ学習過程で組織し、その中に「運動有能感を高める視点」「学習問題を児童が内発的に生み出す視点」を取り入れて実践した。実践は、小学校4年「キャッチバレー」の単元において行い、以下の四つの視点から、授業の有効性を検討した。
①形成的授業評価を毎時間測定し、その変容を分析する。
②「運動有能感測定尺度」を用いて、単元前後の変容を分析する。
③授業VTRによって学習者の技能の向上を分析する。
④チームでの関わりの様子をICレコーダーに録音し、発言内容を分析する。
2 有効性の検証
手だてを取り入れた授業において、形成的授業評価は右肩上がりに得点が上昇していく傾向が見られた。単元前後の運動有能感の各因子と合計について、対応のあるt検定を行った。すると、すべての因子で有意な向上が見られた。この結果より、児童が運動の特性を十分に味わい、主体的に学習を進めている様子が明らかになった。他者との関わりにも変化が見られ、よりよい解決策を見いだす姿が多く見られた。また、技能レベルの向上も見られ、本単元で実践した学習過程の有効性は立証できた。
3 成果と課題
本研究で、取り入れた学習過程は、児童の主体性や他者との関わりの質を高めたりすることに有効であると立証できた。運動に対する意欲や肯定感を高めることができれば、生涯スポーツの実践者の育成の基礎につながるだろう。今後は、他の単元でも、実践を積み重ね、「主体的・対話的で深い学び」を目指して実践していく。
<参考文献>
「運動有能感の構造とその発達及び性差に関する研究」 岡沢祥訓・北真佐美・諏訪祐一朗