音楽科の学習の中で、子どもたちになじみが薄い傾向にあるのが「郷土の音楽」分野である。そこで、子どもたちになじみのある松浜盆踊りを題材とすることにより、郷土の音楽に憧れをもち、思いをもって子ども盆踊りをつくり、伝えるようになるのではないかと考え、その効果を検証するために三つの手だてを講じ実践を行った。
1 郷土の音楽に憧れをもつための働き掛け
題材の最初に、盆踊り保存会の方を招いて、踊りと太鼓を体験する活動を行った。盆踊り保存会の演奏を生で聴き、太鼓打ちを体験したことで、郷土の音楽をもっと知りたい、やってみたいという憧れが生まれた。さらに「松浜のよさを子ども盆踊りにして保存会の方に伝えよう」という題材を貫く学習課題ができた。
2 思いをもって子ども盆踊りをつくるための働き掛け
子ども盆踊りをつくるために、既存の盆踊りを教材化した。松浜のよさを出し合い、子どもたちの手で歌詞をつくったことで、郷土のよさを再発見し、子ども盆踊りで保存会の方に伝えたいという気持ちが高まった。また子ども盆踊りを一つにするために、何度もCDを聴き直し、曲全体のイメージを共有した。太鼓の拍に合わせる活動を通して「歌は拍に合わせて伸ばす音を気に付けて歌おう」「笛は祭りの雰囲気を出してお客さんが寄ってくるように吹こう」と工夫をすることができた。「集う人を楽しくさせるための盆踊りをつくりたい」という願いをもち、クラス全体で音楽づくりをすることを通し、パートの学びを深める姿が見られた。
3 伝える場の設定
中間発表会で、学年の子どもたちに子ども盆踊りを楽しんでもらい、満足感を得ることができた。アンケート記述より改善点にも気付くことができた。さらに盆踊り保存会の方に子ども盆踊りを聴いてもらう活動を通して、自分たちの盆踊りを喜んでもらえたことで、達成感を感じることができた。
4 成果と課題
郷土に伝わる盆踊りを題材とし、生の演奏に触れ、人から学ぶ活動を行ったことで、その歌が生まれた背景や伝承する人の思いを感じ取ることができた。また松浜盆踊りを正確に再現するのではなく、盆踊りを形作っている要素を選択し、子ども盆踊りとして再構成することで、歌詞をつくる面白さや笛の旋律が醸し出すよさに気付くことができた。さらにクラス全体で協同して音楽づくりをする楽しさを味わうことができた。今後も郷土の音楽を題材にして、自分の学んだことがどう社会の中の音や音楽とつながっているのかに気付かせながら実践を積み重ねていきたい。