1 主題設定について
学習指導要領改訂により、「話す」技能が「やりとり」と「発表」に分かれる。「発表」では、準備した原稿を暗記して話すのではなく、即興で身近なことについて話すことが求められている。また、生徒に実施したアンケートの中で、生徒が最も高めたいと思っている力が「即興的に説明する力」であった。以上のことを踏まえて、本研究主題を設定した。
2 手だてと研究仮説
本研究では、身の周りのものを即興で説明する表現力と、「もっと多く表現したい。知りたい。」という意欲の、両面の向上をねらっている。講じた手だてと研究仮説は以下のとおりである。
①その場で指定されたものを相手にクイズ形式で説明する活動(Guessing Game)を、各授業の帯活動として行う。4回のGuessing Gameの後に、得てきた表現を駆使して、指定された県について即興的に紹介する帯活動(Mini Speech)を設定する。ここまでを1サイクルとし、これを4月から7月までに3サイクル行う。
②各活動をアウトプット(表現)から行わせ、うまく言えないモヤモヤ感や疑問を生じさせた上で、様々な形で必要とされる表現のインプット(表現の導入)を行う。
【研究仮説】
「指定されたものを即興で説明する活動と、そこで不足していた表現の提示を継続的に行うことで、英語表現に対する知的好奇心と表現力が高まり、即興的に身の周りのものを紹介する力が向上するであろう。」
3 仮説・手だての有効性の検証
4月最初と7月最終日に、「新潟県の名所名産のパンフレットを見ながら、新潟がどんな場所かを海外からの観光客に紹介しよう。」というMini Speechと同様の評価用のタスクを与えた。その様子をタブレットに保存し、4月~7月までの手だての有効性と、即興的な表現力の向上を見取った。7月時には英語の使用量(総英文数)が平均で4月の10.4文から13.24文に上昇した。3秒以上のpause(間の長さ)に関しても4月の12.4秒から8.3秒に減り、良好な結果であった。また、生徒の活動の様子、事後アンケート、振り返りシートから生徒の意欲的な様子や向上心、知的好奇心を見とることができた。
7月の評価タスクにおける発話スクリプトの分析より、30人中29人の生徒がこれまでインプットした表現をアウトプットしていた。以上のことより、手だての有効性と仮説を検証することができた。
4 成果と課題
英語の使用量・間の長さ・インプットしたものがアウトプットできているか、の3観点で個々の生徒を数値化・記号化すると、97%の生徒がA、B評価であり、表現力の向上が見られた。反面、即興的な部分に焦点を当てていたため、英文の正確性を欠く表現が多く見られた。
<参考文献>「新学習指導要領の展開・外国語編」 /金子朝子・松浦伸和、明治図書