今回の学習指導要領の改訂で、中学校数学科の、「数学的な見方・考え方」とは「事象を、数量や図形及びそれらの関係等に着目して捉え、論理的、統合的・発展的に考えること」となっている。今回はこの「統合的な考え方」を授業に取り入れていこうと考えた。
「統合的な考え方」とは、多くの事柄を個々ばらばらにしておかないで、より広い観点から、それらの本質的な共通性を抽出し、それによって、同じものとしてまとめていこうとする考え方である。
3学年の式の計算の分野で「統合的な考え方」のアプローチの仕方を工夫することで、公式を構造的に理解させることにより、基礎基本の定着を促し、苦手意識がなくなり、意欲的に課題に取り組むことができると考えた。
1 研究の概要
統合的な考え方を取り入れる方法として、テストの無答率が高いクラスには、暗記する内容を減らせるように一つの公式を教えそれが変化していく方法で指導した(アプローチa)。もう一方にはそれぞれの公式を教え、最後にまとめる指導の仕方で指導した(アプローチb)。
2 有効性、変容の検証
確認テストや、基礎学力テスト、定期テストの正答率や無答率、考え方などそれらの変容を見て今後の指導に生かしたいと考え、二つのアプローチの仕方を設定し、実践を行った。
3 成果と課題
成果
「アプローチa」では展開から因数分解に変わっても一つの公式を継続的に使っていたので、点数が大きく下がらず、無答率も低いことがわかった。
「アプローチb」では展開、因数分解の覚える公式が増えるにつれて、点数が下がる傾向にあった。最終的に統合的な見方を取り入れることで、点数も「アプローチa」に近づいた。
課題
「アプローチa」ではxに係数がついた因数分解の正答率が低かった。一般の形とxに係数形を関連付けて考えさせる、定着させる工夫が必要である。
「アプローチb」では、公式の共通性に気付かせ、関連付けて、考えさせる工夫が必要であった。公式と問題、公式と公式を関連付ける場面を工夫することが正答率を上げることになると思われた。
4 今後の指導
統合的な考え方は、『関数』、『図形』の分野でも活用できると考える。関数では、比例、反比例と同じような考え方でy=ax²を考えることができる。他の分野でも、統合的な考え方、それを 関連付ける工夫を行い、基礎基本の定着を目指していきたい。
〈参考文献〉 (1) 「数学的な考え方の具体化」 /片桐重雄
(2) 中央審議会 (平成28年度)