私は算数授業において、子どもたちの「できた!」「分かった!」という感激を大切にしたいと考えている。この体験の積み重ねこそが、子どもたちの主体的・対話的に学ぶ意欲を高めていく。
この感激を生み出すためには、子どもの問いから始まる授業を展開していく必要がある。授業中にたまたま子どもが問いを抱いたり、たまたま考えを発展させていったりしたという偶然ではなく、日々の算数の授業において確実に子どもの中に問題意識が生まれ、解決に向かって突き進んでいく授業を目指したい。そのためには、毎時間簡単に使えるような手だてが必要となる。
そこで、私は授業における意図的な仕掛けに着目した。仕掛けとは、本時のねらいに結び付く学習活動を呼び起こすものである。その仕掛けは次の3段階となる。
仕掛け(1) 共通の数学的知識の確認 → 子どもの思考を共通の土台に乗せる。
仕掛け(2) ずれを生み出す → 子どもに問いをもたせる。
仕掛け(3) 数学的知識を捉え直す → 子どもの数学的知識をつなげたり、統合したりする。
本研究では、深い学びの鍵となる数学的な見方・考え方を働かせ、数学的活動を促進させるための授業における仕掛けの有効性について考察を進めた。
3つの仕掛けにより、子どもの問いが生まれ、解決の中で既習の数学的知識の捉え直しが行われていった。この既習の数学的知識の捉え直しこそ、深い学びの姿であると考える。授業中、子どもの「えーっ!」という疑問の声や「あっ、そういうこと!」「分かった!」という喜びの声が聞こえてきた。今後も毎日の授業において、子どもの主体的・対話的な学びを促す、より有効な仕掛けについて考察し、実践を重ねていく。