子どもの理解は、分っているつもりでも、経験をもとにして考えがちだ。このような経験的、自然発生的にもつイメージや思い込みのことを、「数学的誤概念」と呼ぶことにする。子どもに夢中になって考えさせるためには、経験とのズレを感じさせる手だてが必要だ。そのズレから、子どもが「なぜだろう」と学習課題をもち、友達と考え合うことで理解を確かなものにしていくと考える。
そこで私は、第4学年の単元「角」と「小数」の実践を通して、次の2点から検証した。
1 数学的誤概念が表出する問題提示
「角」では、子どもにパックマンを作らせ、黒板上で口の大きさ順にパックマンを並べさせた。一番大きな口を開けたパックマンは、180°のものだった。これが一番大きいと捉えている子どもが多く、これ以上大きな口を開けたパックマンは作れないという数学的誤概念を表出させた。また、「小数」では、小数第二位までの数+小数第一位までの数の筆算において、小数点の位置を揃えずに、末尾を揃えてしまう数学的誤概念を表出させた。
2 揺さぶりをかける発問から作る、数学的誤概念を基にした学習課題
「角」では、180°口を開けているパックマンを指して、「これ以上大きな口を開けたパックマンは作れないよね」と揺さぶりをかけると、「作れない」という子と、「あごがはずれちゃうけど、できるよ」という子に分かれ、『一番大きな口を開けているパックマンは、どんなパックマンなのかな』という学習課題が生まれた。「小数」では、教師が間違えた方法で計算して見せ、「これでいいよね」と聞いた。すると子どもたちは、「違う」「なんで違うか言える」と話し始めた。『小数どうしのたし算は、どうやって計算すればよいのかな』という学習課題が生まれた。子どもは、学習課題がはっきりすると、夢中になって考え始め、話合いを通して数学的概念を獲得し、理解を確かなものにしていきたい。
このような授業を進めていくには、教師が子どもの数学的誤概念を把握しておく必要があると考える。今後は、子どもがどんな誤概念をもっているのかを探っていきたいと思っている。