道徳科における「質の高い多様な指導方法」として、「体験的な学習」が挙げられている。その例示とされている役割演技については、これまでも様々な実践が行われ、児童がねらいとする道徳的価値を実感的に理解するために有効な指導方法であることが検証されてきた。しかしながら、その指導方法の複雑さにより、敬遠する教師も多く、なかなか道徳授業で有効に用いられてこなかった経緯がある。
本研究では、役割演技を用いる教師に必要とされる「監督としての技量」を高める研修の在り方を、以下のように探ってきた。
1 役割演技に関する校内研修の実施
道徳科で求められる「質の高い多様な指導方法」について説明
役割演技を用いた道徳授業の進め方について概要説明
役割演技を用いた模擬授業「貝がら」の実施
2 同僚教師の教室での道徳授業の実施
実践者による役割演技のウォーミングアップ授業の実施
実践者による授業「お母さんはヘルパーさん」の実施(同僚教師にお母さん役として演者体験をしてもらう)
同僚教師による授業実施(指導案、教材は実践者が提供する)
3 同僚教師、児童へのアンケートの実施
1、2の取組で、教師や児童が役割演技を用いた道徳授業に対する印象に関する継続的な調査
本取組の結果、校内研修だけでは理解が不十分だった点を同僚教師の実践に対して手厚くサポートすることにより、同僚教師は、役割演技場面で果たす監督役割をより深く理解することができた。また、今後も役割演技を用いてみたいという教師の意欲を高めることにもつながった。更に、児童アンケートから、「役割演技は楽しい」「役割演技があると、登場人物の気持ちが分かりやすい」といった反応もあった。
多くの教職員が更に技量を高め、役割演技を道徳授業で積極的に用いることができるよう、今後も継続的にサポートしていきたいと考えている。