学習指導要領でも、「ボール操作」と「ボールを受けるための動き」が明示されている。しかし、これらの技能をゲーム中にいつ、どのように使うのかという状況判断が適切でないと、実際にはゲームに実質的には参加しにくい。学習指導要領では、「ボールを受けるための動き」の知識(戦術)が具体的に明示されていない。そのため、教師は指導方法が難しいのだと考えられる。
そこで、自分自身のサッカー指導者ライセンス取得の経験も生かし、平成23年度~27年度の実践を通して、児童が「ボールを受けるための動き」を少しでも自然に身に付けられるための工夫として、児童と作り上げた「条件付きゲーム」の様々な条件を考え、担任した4~6年生の児童で実施してきた。その数年間の中で、効果的な条件をいくつか見付けることができた。そして、今まで教師(私自身)がゲームの中の児童のボールがない動きを見て、必要な条件を加え、条件付きゲームを実施してきた。
本研究は、これまでに作り上げた条件付きゲームを活用して、児童自身がゲーム分析をし、課題を見付け、必要な条件ゲームを取り組むことで、チームとしてボールを受けるための動き方・味方への協力の仕方を主体的に対話的に学ぶことができるか、また、サッカーに限らず別のゴール型ゲームでも効果があるかどうかを以下の手だてを講じ、取り組んでいる。
1 条件付きゲーム:A~Iの条件をゲームに取り入れ、ボールを受けるための動きを身に付ける。
2 条件付きゲームの説明書:身に付けるべき力や学ぶべき内容、学び方を見通す「学びの地図」としてこの条件付きゲームの説明書を活用する。活用を通して、自分たちのチームの課題を解決するために、仲間同士の関わりを深め、児童の主体的・対話的な学びを支援する手だての一つとして条件付きゲームの説明書を取り入れる。
3 チーム内ゲーム:競争のみが意識されないように、競争刺激を緩和することやチーム力向上に意識をもたせることを目的で「チーム内ゲーム」という手だてを用いる。ゲームをするときは、チーム内で、メンバーを考え、ゲームをする。毎回のゲームでの課題解決のために、チームのメンバー構成を考えることが「何を学ぶか」に加えて、「どのように学ぶか」を視点に授業に取り組むことができる。
4 サポートプレーの意識付け:「サポートプレー」と名付けたものを意識させる。「サポートプレー」とは、①相手のいないところへ動いた。②ボールをもらいに動いた。③仲間に動き方やプレーについてアドバイスしたことを意味する。自己評価の一つとして「自分の動きがチームのサポートになっているか」という視点をもちながら、ゲーム後に振り返りを繰り返し、ボールを持っていない時の動きを児童自身が意識・判断でき、より動きの向上を図るために「サポートプレー」を導入した。毎回の授業で使用する学習カードの振り返りや条件付きゲームを選ぶ判断材料として「サポートプレー」を意識づける。そのことを通して、児童自身が「何ができるようになるか」の視点で授業に取り組むことができる。また、この「サポートプレー」が、ボールを受けるための動きを身に付けるという一つの目標と評価の観点を一致させる工夫の一つとしている。
5 M-T-Mメソッド(マッチ・トレーニング・マッチ)の活用:課題解決のための方法の一つとして、M-T-Mメソッドを手だてとして取り入れることとした。M-T-Mメソッドとは、Match-Training-Match という意味がだ。まず、ゲーム(Match)を行う。その試合の中から自分たちの課題を見付け、その課題を解決するために、ドリル練習を行ったり、作戦を考えたりする(Training)。そして、それを反映させた試合(Match)を行う。このような練習スタイルのことをM-T-Mメソッドと言う。
以上の手だてを講じ、ボールを受けるための動き方・味方への協力の仕方を主体的に対話的に学ぶことができる。