1 主題設定の理由
読み書きの苦手さは学習活動全般に影響を与える。しかし、苦手さの原因は様々である。読み書きに苦手さがあり、それが原因でストレスがたまり、物や人にあたり、教室にいられなくなる子に対し、苦手さの原因を分析し、本人に合わせた支援を実施したい。これによりストレスを低減させ、併せて学習への意欲も高めたいと考えた。
2 研究内容と方法
(1) 研究内容
国語の時間を中心として起きる読み書きの苦手さの原因を分析する。読み書きの苦手さに合わせた教材を用いて指導を行い、読み書き能力の伸長と問題行動の生起率を比較することによって、教材と指導方法の有効性を明らかにする。
(2)研究方法
読みのつまずきの原因を明らかにするために、WISC-Ⅳの結果と言語・コミュニケーション発達スケール(以下LCSA)の結果を分析する。それに応じた教材を選択し、実施し、その取組の様子を観察することで、その結果から読みの抵抗感への効果を判断する。また、事前のアセスメントと比較して読み能力の向上の効果を評価する。さらに、学習時の問題行動の回数の記録を行い、その変容を分析し、学習への取組が問題行動の増減に影響を与えたかを判断する。読みの能力との関連について検討するため、指導場面は特別支援学級での国語の時間に限定して実施する。
3 実践と考察
支援開始前には絵を見て片仮名を思い出して書く課題を行った。しかし、片仮名を思い出すことはほとんどできなかった。この時期、問題行動の評価基準で決めた得点が高かった。支援第1期では、保護者の協力を得て、情緒の安定化を図り、学習では片仮名課題をヒントの多いものに改善した。この時期の問題行動得点は減少した。また、この期間に行った検査結果等から対象児の読みの苦手さは、読み障害などの認知特性によるものではなく、ADHDから生じる集中力の問題、未学習から生じる言葉の流暢性の問題と学習意欲の低下が原因と考えられた。そこで支援第2期では、支援第1期と同様の片仮名課題とともに本人の注意力や習熟度に合わせた読み課題を提示し、支援を継続した。
4 結果
本人の読み能力に合った読み課題を取り入れることで、問題行動得点が更に減少した。読みの速度も速くなり、LCSA実施時に比べて支援第2期後は速くなり、読み能力の向上が認められた。また、進んで学習準備をする姿もみられるようになった。