当校では、作業学習を中学部の中心的な指導の形態の一つと捉えて教育実践を行っている。
当校の中学部の作業学習では、「働くことへの前向きな思いや考えといった価値を見出し、自分の役割となる活動に意欲をもって取り組む」ことをねらいとしている。すなわち「自分のために」という意識だけでなく、「他人のために」という意識を育てる必要がある。
自分たちが使うものを作ることを目的にした2年前の研究では、意欲的に取り組む姿が見られたが、取組への興味が薄れると意欲が低下してしまう姿があった。そこで、以下のような手だてを講じ、生徒が学習への意欲を継続するだけでなく、「もっといい仕上がりにしたい」「もっといい製品を作りたい」といった向上心をもって活動できるようにしたい。
1 生徒の意欲を高めるための単元構成
生徒の思いに着目し、単元を「生徒の興味・関心や得意なことを生かし、楽しさを十分に味わうことができる活動」「序盤で学んだことを生かしながら製品を自分たちで使うことで自分の取組の良さに気付くことができる活動」「身近な人に自分たちの取組を承認・称賛してもらったり、作った製品を使ってもらったりすることで自分の取組の良さを味わうことができる活動」の三つの段階で構成した。意欲を継続させ、向上心をもたせるためには、活動自体の楽しさだけでなく、活動の結果にも目を向け、結果に良さを感じることが必要であると考えた。そこで、「活動自体の楽しさを味わう段階」「出来上がった製品の良さを自分たちが味わう段階」「出来上がった製品を他人に使ってもらう段階」の三つを順に追って実践することで、生徒が向上心をもって取り組むことができるだろうと考えた。
2 意欲を後押しする支援
意欲を継続させ、向上心をもつためには、生徒一人一人の取組の支援とは別に、作業意欲を後押しする支援が必要だろうと考えた。生徒一人一人には、自分の工程が自分からできるようにするための支援具を用意したり、自分ができたことが分かるための支援具を用意したりする。それ以外に製品であるプランターにグループの生徒全員が好きな苺を植える活動や、生徒にとって身近な教師から取組の様子を承認・称賛してもらったり、製品を頒布したりする活動を行う。「全体の支援」と「意欲を後押しする支援」の適宜見直しを図り、担当者間で精選して実践していく。
以上の2点を中心に実践を行う。実践を通して、生徒は自分の目の前の作業に「もっとやりたい」「もっといい仕上がりにしたい」という思いで生徒一人一人がめあてをもって取り組むだろうと考える。生徒の思いの変容を取組の様子から分析する。