これまで、理科の実践をしていく中で感じられた児童の姿は以下の通りである。
「見ることができる現象だけに目を向けてしまい、そこにとどまってしまう。自然の事物・現象に詳しく迫ろうとしたり、それらの仕組みについて考えたりすることがないと、表面的な理解で満足してしまう。そのため、条件が変わったり、場面が違ったりしてしまうと、説明できなくなる。」
小学校4年で学習する目に見えない事象の理解は、実験結果を説明するだけでは十分ではない。また、児童がもつ誤概念は日常生活から得られたものが多く、なかなか変容しにくい。
これを解消する手だてとして、小学校4年理科「水の3つのすがた」「ものの体積と温度」において、観察実験を行うとき、次のような働き掛けを行った。
1 予想や結果を吟味させるために、比較する観点を提示する。
2 目に見えない変化は、ホワイトボード上で、モデル図を用いて表現させ、その内容を説明させる。モデル図は粒(大きさや形の変化)と矢印(動く方向と強さ)で表す。
3 予想や結果について、小集団でリレー形式の説明活動を行わせる。
4 実験結果とその説明をもとに、他の関連する事象へ適用させる。
比較する観点をもとに、個人でモデル図を作成させ、小集団の中でそれらを検討させたことで、児童の思考が修正されたり、補完されたりした。また、リレー形式で説明活動を行わせたことで、全員参加の意識が高められ、学習を自分事として捉えさせることができた。さらに、他の事象へ適用させることで、児童は、新たに獲得した概念を確かなものにすることができた。
一方で、課題は以下のことが考えられる。
・導入場面で学習課題の共通理解を図ること。
・机間指導での児童理解と、教師の言葉掛けの精度を上げること。
・児童同士が、互いの考えを聞き合い、妥当性を検討できるような小集団の仕組みを作っていくこと。