文学的な文章における解釈は、読み手の既有知識や既有経験による大きな影響を受けており、同じ文章であっても捉え方に違いが生じることがある。したがって、文学的な文章を解釈する力を高めるためには、文章を多面的な見方で捉えさせることが重要であると考え、グループで解釈を交流する学習を行ってきた。しかし、文章をどのように捉えて解釈を導いているのか理解し合うことが難しく、新たな気付きが生まれて解釈が変容するような深まりは見られなかった。
そこで、解釈を導く思考過程を明確にして可視化すること、「より納得できるのはどのような解釈か」という問題意識をもたせてグループ検討させることが必要であると考えた。小学校6年生を対象として、次の3つの手だてを用いて授業実践を行った。
1 「AorB」選択式の発問
解釈を「AorB」で選択させる発問を行った。これによって、児童は「どちらの解釈が納得できるか」という問題意識をもち、主体的に作品の解釈や検討に向かうと考えた。
2 解釈を導く思考過程を可視化するツールの活用
思考過程を、根拠(教材文)-理由(児童の既有知識や既有経験)-解釈(AorB)の3つの段階に整理した。そして、そのような思考を促し可視化するための思考ツール「キノコチャート」を開発し、児童に活用させた。
3 思考ツールを活用したグループ検討
各自が作成した「キノコチャート」を媒介とし検討することで、グループ内の児童が互いの思考を容易に共有することができた。そのことで、AorBどちらの解釈が納得できるか、根拠と理由に焦点化して検討させた。
【研究の成果と課題】
「どちらの解釈がより納得できるか」をグループで検討する中で、新たな文章に目を向けたり、文章の新たな読みに気付いたりして解釈が変容する姿が見られた。
その一方で、場面の移り変わりを考慮せずに検討を進める様子も見られた。場面の移り変わりを考慮して検討を進めさせる手だてが必要であると感じた。
今後も、文学的な文章を解釈する力を高める指導について研究を深めていきたい。そして、文学作品の面白さを感じ取って意欲的に読書に向かう児童を育てたい。