高橋ら(2013)による器械運動に関する調査結果(24小学校の中学年・高学年1884名と、8中学校の1928中学生を対象)⁽¹⁾によると、開脚跳びと台上前転が70%の平均達成率であるのに対して、かかえ込み跳びの平均達成率は跳び箱横置きで60%、縦置きでは47%と報告されている。かかえ込み跳びの練習として「うさぎ跳び」が挙げられ、様々な文献で有効性が指摘されている。しかしながら、うさぎ跳びの動きの習熟度が、かかえ込み跳びの習得にどのように影響しているのかは明らかにされていない。本研究では、「うさぎ跳びの動きの質を高め、応用していくことで、かかえ込み跳びの技能が高まるであろう」という仮説のもとに、目指すうさぎ跳びの姿に近づけるための学習ステップ(ステップ1~3)と、うさぎ跳びをかかえ込み跳びに応用させるための学習ステップ(ステップ4~7)を用いた授業実践を行い、検証した。
全7時間の授業実践におけるかかえ込み跳びの達成率は、横置き(3段50cm)で93%(27名)、縦置き(4段60cm)で62%(18名)であった。ステップ2にとどまった児童は4名、ステップ3にとどまった児童は2名であった。この6名以外の児童は、ステップ7までを滞りなく達成し、体の投げ出しと手の突き放しが大きいうさぎ跳びに近づいた。また、児童の内観記録からも、ステップ2~5でうさぎ跳びの動きのコツをつかんだことが、その後のステップやかかえ込み跳びにつながったことが確認された。なお、第4時終了時点で学習ステップの中途にとどまった児童6名については、第5時から跳び箱の横跳び越しからの学習方法に変更して指導を行い、第6時で1名、第7時で3名が横置きでのかかえ込み跳びを達成した。
これらの結果より、本研究で考案した学習ステップに基づく授業実践は、うさぎ跳びの動きの質を高め、かかえ込み跳びの技能向上につながるものであったと言える。授業でかかえ込み跳びを達成できなかった2名の児童の学習過程を検討し、学習ステップを充実させることが今後の課題である。
【文献】
(1)高橋健夫(2010)「体育科のナショナルスタンダード策定の試みとその妥当性の検証,科学研究費基盤研究A研究成果報告書」,pp.199-243