現代の生徒が成人して社会で活躍する頃には、生産年齢人口の減少、グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により、社会や職業の在り方そのものが大きく変化する可能性がある。厳しい挑戦の時代を乗り越え、伝統や文化に立脚し、高い志や意欲をもつ自立した人間として、他者と協働しながら価値の創造に挑み、未来を切り拓く力が必要になってくる。そのために、学校教育を通じて、組織的・体系的なキャリア教育の必要性が挙げられている。
キャリア教育の中でも、私は「基礎的・汎用的能力」の育成が重要であると考えている。「基礎的・汎用的能力」として、多様な生き方に関する様々な情報を適切に取捨選択・活用しながら、自ら主体的に判断してキャリアを形成していく力(キャリアプランニング能力)や、仕事をする上での様々な課題を発見・分析し、適切な計画を立ててその課題を処理し、解決することができる力(課題対応能力)などが挙げられる。これらは、学校教育の中ではもちろん、学校教育の後に迎える社会生活に欠かせない力であると考える。
本校中学校2年生は「今やっている理科の学習は自分の将来や社会生活に役立つと思いますか」という質問に対して、36%の生徒(81名中26名)が「役立たないと思う」「あまり役立たないと思う」と回答している。その理由としては、「自分の将来就きたいと思う職業(文系)とのつながりを感じない」「一部の職業では役立っても、他の職業では役立たない」「理科の公式を知っていても普段の生活で考えることはない」などが挙げられた。約1/3の生徒が、学校での理科の学習と社会生活とのつながりをイメージできていないと感じている。
そこで、本研究では、理科の学習において、キャリア教育の視点を取り入れ、観察・実験の場面で、理科と社会生活とのつながりを考えさせながら授業を展開していくことで、生徒に「基礎的・汎用的能力」を身に付けさせることを目指した。