文学的な文章の学習において、「物語をどのように読んだらよいか分からない」という児童が多い。授業で扱った教材文は読むことができても、別の作品になると、どのように読んでよいのか分からないのである。私のこれまでの指導を振り返ってみると、教材文を正確に読み取らせるための発問や指示に留まっていた。しかし、「教材文を教える」のではなく、「教材文で教える」ことが大切であり、そのポイントは、読みの観点を児童に身に付けさせることであると考える。
本研究では、文学的な文章の学習において、児童に観点をもって作品を読ませることを通して、児童が自ら読み、自分なりの解釈をもつ姿を目指す。そのために、2つの手だてを講じる。
1 教師が児童に読みのモデルを示す
観点を児童に示す際には、教師が一人の読み手としての読みのモデルを示す。観点を教え込むのではなく、モデルを手掛かりとして児童に自ら読みの観点に気付かせる。また、単元の導入で教師が読みのモデルを示すことで、身に付けさせたい読みの観点を意識しながら教材文を読み進める。この活動を通して読み方の習得を図る。
2 自分なりの解釈を表現する活動を設定する
本研究は、2つの単元での実践を基に検証する。1つ目は、5年生「大造じいさんとガン」、2つ目は、6年生「やまなし」である。「大造じいさんとガン」では、情景描写を読みの観点として、物語の魅力を本の帯にまとめさせる。「やまなし」では、比較(対比・類比)を読みの観点として、単元の終末では、「作品の心」を自分の言葉で表現させる。観点に沿って読み進めた自分なりの解釈を表現させることで、自分の読みの変容を自覚させる。
これらの手だてを通して、児童一人一人に読みの観点を身に付けさせる。そして、自分の力で意欲的に読み、作品を味わう姿を期待して研究を進める。